医療法人ラポール会 青山第二病院
クッキンサプリFe使用現場
医療法人ラポール会
青山第二病院様を訪問しました。
大阪府河内長野市、自然環境に恵まれた街の一角にある青山第二病院(一般病棟36床、医療療養型52床、介護療養型32床)
今回は、嚥下障害の患者様へ「クッキンサプリFe」を使った少量で高栄養の鉄ゼリーを提供して栄養改善に成功されている同病院栄養科管理栄養士の房晴美先生にお話を伺いました。
房先生は平成16年7月に南河内嚥下勉強会を立ちあげ、摂食・嚥下障害の知識と理解を深めることを目的に、多職種参加型のスタイルで勉強会や調理実習などを実施。近畿全域のみならず現在は全国区からの参加が増え、熱心な活動で注目を集めています。
青山第二病院
栄養科管理栄養士 房 晴美先生
大阪府立公衆衛生学院栄養学科卒業。
南河内嚥下勉強会代表、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士、日本摂食嚥下リハビリテーション学会評議員。
- 記者
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少量で、高栄養の鉄ゼリーを提供して
Q:2007年から低コストで高栄養、しかも確実に食べてもらえる「鉄ゼリー」を提供するようになったそうですが、房先生が鉄ゼリーを考案したきっかけについて教えて下さい。
- 房先生
- 当院は慢性期・終末期の患者様がほとんどで、その大半は摂食・嚥下障害をかかえています。
このような患者様に対して栄養改善を図る際に、最初は市販の栄養補助食品を使用していました。しかし、摂食・嚥下障害の患者様はたくさんの食事を摂る事は困難な上に、ADL動作能力も低下しているために、座位保持時間にも制限があり、食事量を増やしての栄養改善はとても不可能です。しかし、必要な栄養量と栄養素を入れないと摂取不良から容易に低栄養に陥ってしまいます。効果的に栄養改善を図るにはどうしたらいいのか?確実に食べてもらうためにはどうしたらいいのか?
まず考えたのは、量を増やさないために、お粥や味噌汁など提供している食事に栄養素を入れる方法です。しかし、これだと見た目は変わらないので積極的に食べさせてもらえず残食となって返ってくる可能性が高いと思われました。あれこれ悩んでいたある日、いつものようにミールラウンドにいきました。看護師さんたちは、患者様に医師から処方された薬をなんとしても必ず飲ませようとしています。この光景を見て、「そうだ!薬感覚で提供すれば、確実に食べさせてもらえるんだ!」と思いました。こうして、数口量という少量で高栄養でそして食べやすい味のゼリー(鉄ゼリー)が産まれました。 - 記者
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【鉄ゼリーとは】
Q:「鉄ゼリー」はどのようなものですか?
- 房先生
- 低コストで少量・高栄養をコンセプトにつくりました。(表1)
嚥下障害の方でも無理なく確実に食べられる量を「40cc」と設定し、朝・昼・晩と1日3回提供しております。
看護師さんたちは、患者様に食事の最初に「これは薬です。先食べて」といって高栄養ゼリー(鉄ゼリー)を必ず残さず食べさせてくれました。これによって、1回量40ccという少量で、1日分で約エネルギー200kcal、たんぱく質10g、鉄14mgが確実に補給できることができました。(表2) - 記者
- Q:患者様の栄養状態は改善しましたか?
- 房先生
- 当院の療養型病床群では3ヶ月に1回必ず血液検査をして栄養状態の評価を行っています。鉄ゼリーを提供した患者様は、短期間でヘモグロビン値やアルブミン値がぐんぐん改善していく方もいれば、ゆっくりあがる人もいますが、1年のスパンでみると、必ず効果が出ています。
ヘモグロビンがなかなかあがらない人は、アルブミン値が低いことが多く、アルブミン値がある程度あがってからヘモグロビンが改善する場合が多いこともわかりました。(2010.日本病態栄養学会一般演題発表)
また、栄養状態の改善とともにADL動作能力と活動性の向上もみられました。(図1,表3) - 記者
- Q:「鉄ゼリー」の提供によって貧血食加算をとっているとお聞きしましたが?
- 房先生
- 検査値からヘモグロビン値をチェックし、10g/dl以下の場合は医師に貧血食の打診をして、貧血食加算をとります。医療保険で1食76円、介護保険で1日230円加算されますので、その費用の中で鉄ゼリーを作っています。(表2)
以前は、確実に食べてもらえない栄養補助食品のコストがかさんでいましたが、鉄ゼリーは低コストで提供することができるので給食材料費の削減もできました。 - 記者
- Q:「鉄ゼリー」をつくるうえで苦労した点はありますか?
- 房先生
- ビタトースの種類によって、ゲル化剤の量が一緒でも硬さがかわってしまうことですかね。
物性が違うと病棟からクレームが出てしまうので、物性の安定化に苦労しました。
また今は、病状や喫食量によって1回分の鉄の量を増やしたりもしています。 - 記者
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【鉄ゼリーは栄養科からの情報発信ツール】
Q:「鉄ゼリー」はお食事の最初に食べてもらうと伺いましたが?
- 房先生
- 私はこの鉄ゼリーを「薬感覚で必ず残さず食べてもらうこと」に意味があると考えています。
ですから、ゼリーではありますが、デザートではなく、お食事の最初にとにかくこれだけは食べてやという感じで患者様全員に食べていただいており、それが治療成果に結びついていると思います。
また、鉄ゼリーが提供されている患者様は、各職種のスタッフが「この患者さんは貧血である」とか「低栄養状態である」ということが一目瞭然で共通認識できます。
共通認識ができると、おのずと看護師や介護スタッフも栄養状態を意識するようになり、摂取量にも気を付けてくれるようになります。また、栄養状態が悪いから褥瘡発生にも注意しようとする意識も出てきます。
ベッドサイドからの栄養科への情報発信もありますが、鉄ゼリーはある意味それ自体が、栄養科からベッドサイドへの情報発信ツールになるものだと考えています。
ですから、お味噌汁などの料理に患者様にわからないように(クッキンサプリFeなどを)混ぜることもできますが、そうなると皆の意識が低くなり、提供しても残されてしまっては成果をあげることができなくなってしまいます。 - 記者
- Q:「クッキンサプリFe」は使用感はいかがですか?
- 房先生
- 味もないし、胃にやさしいというのがとても使いやすいです。
鉄という「まずい」「胃が荒れる」というイメージが強かったですが・・・。
鉄ゼリー以外にも当院では経腸栄養患者様にも使っています。
添加水にクッキンサプリFeを6~8mg/日入れています。
粉なので入れたい分だけ添加できる点が大変使いやすいと思います。 - 記者
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【新製品 ソフトベジフルについて】
- 房先生
- 患者さんによっては甘いゼリーが苦手な方もいます。
普通の野菜を使うよりも、ビタミンや鉄分などを強化ができるにはよいと思います。
また、乾燥しているので手軽に好きな量で料理ができるのが魅力的で、保存がきくのでとっても便利ですね。
鉄ゼリーの進化系としても検討できるのではないかと思います。